キシリトールは食後の歯磨きの効果を高め、歯質を強くする作用を促します。
また、ご家庭でキシリトール製品を利用することで、お子さんの食育や歯の予防の大切さを伝える際にも役立ちます。
そうした観点から、キシリトールを用いた虫歯予防法は「追加型虫歯予防法」と呼ばれています。
「キシリトール」は
虫歯予防に効果的?
キシリトール入りのガムが虫歯予防に良いと、テレビやネットで目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
近年では、スーパーやコンビニでも色々な種類の「キシリトール配合」のガムやタブレット商品が販売されていますね。
でも、実際どれを選んだらいいのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。
ここでは、虫歯予防を目的とした『キシリトールガム選びの基準』や、そもそも『キシリトールは本当に虫歯予防に効果があるのか』について解説します。
キシリトールとは
キシリトールは
天然素材の甘味料です。
白樺や樫の木、トウモロコシの芯などから取れるキシラヘンヘミセルロースという成分を原料にしています。砂糖の主成分であるスクロースと同じくらいの甘みがありますが、カロリーはスクロースの3/4割程度。
口に入れると冷んやりと爽やかな冷涼感があるのも特徴的です。
実のところ、キシリトールはプラムや苺、カリフラワーやナスといった野菜や果物にも含まれています。
ただし、それらに含まれているキシリトール成分はごく微量です。
野菜や果物で虫歯予防効果が期待できる量(1日5~10g)を満たすことは難しく、また、キシリトール成分をしばらく口の中に留めておくことも重要であるため、
虫歯予防を目的としてキシリトールを摂取するには、ガムやタブレットなどが有効であると考えられています。
キシリトールは本当に虫歯を防ぐ?
キシリトールの虫歯予防効果を証明する研究は、世界で初めて発表された1975年以来、日本を含む様々な国や機関で進められています。研究内容によって虫歯予防の効果を示すデータや数値に違いはありますが、
キシリトールを適切に使用することで3割~8割の確率で虫歯の発生を防げることが分かっています。
キシリトールが虫歯を防ぐ理由とは
キシリトールガムが
虫歯予防に有効とされる理由としては、
主に以下2つのポイントが挙げられます。
- 虫歯の原因となる
酸を作らない - お口の中にはさまざまな菌が存在しています。一部の菌は食べ物に含まれる糖を取り込んで酸を作り出し、歯を溶かしていきます。これが虫歯(う蝕)です。キシリトールも糖アルコールの一種ですが、口の中の菌はキシリトールを利用して酸を作り出すことはできません。さらに、キシリトールには菌の塊であるプラーク(歯垢)中の酸の中和を促進し、虫歯の原因となるミュータンス菌の代謝を阻害する(増殖を抑制する)作用があることも分かっています。
- 唾液の分泌を促す
(再石灰化作用) - これはキシリトールに限ったことではありませんが、糖アルコールの甘みは味覚を刺激して唾液の分泌を促します。また、ガムを噛むことによっても唾液の分泌が促進されます。口の中の唾液が増えることによって歯垢中のカルシウムレベルが上がり、さらに、糖アルコールとカルシウムの複合体が歯の硬組織の中に進入して再石灰化を促すことで、歯質を硬くする作用があります。
虫歯予防先進国の
「フィンランド」と「キシリトール」について
現在、フィンランドは虫歯人口が世界で最も少ないとされる虫歯予防の先進国です。
そんなフィンランドで大人から子どもまで一般的となっているのが、「キシリトールガムを噛む」習慣です。
フィンランドの多くの家庭には、キシリトール入りのガムが食卓に備えてあります。
フィンランド人のお口のケアは基本的に朝夕2回の歯磨きと、その合間や食後にキシリトールガムを噛むこと。
フィンランドでは、キシリトールが口の中の歯垢(プラーク)を減らし、虫歯を抑制してくれるものとして広く知られており、実際にフィンランド人の5歳以下の子どもにはほとんど虫歯がないと言われています。
キシリトールを選ぶポイント
虫歯予防を目的としてキシリトールガムなどの商品を選ぶ際には、以下3つのポイントを押さえるとより効果です。
- キシリトール含有率
最低50%以上
(理想は100%) - 商品のキシリトール含有率は、
成分表から「キシリトール(g)÷炭水化物(g)×100」で算出することができます。また、キシリトール含有率「50%」という数値は、あくまで虫歯予防の効果が期待できる最低ライン。キシリトール含有率は高ければ高いほど虫歯予防の効果は高まります。
- 糖類0g
- キシリトールが配合されていても、菌が酸を出す元となる別の糖類が含まれていては虫歯予防には適していませんので、糖類は0gのものを選びましょう。
また、キシリトール以外に有効な甘味料としては、マルチトールやソルビトールなどもキシリトールと同様に虫歯の原因にならない糖アルコール類です。
- 酸性物が含まれていない
- 商品の酸性度にもよりますが、果汁入りのものやクエン酸などの酸性物が入っているものは脱灰のリスクを考慮して、なるべく避けた方が良いでしょう。
キシリトールが含まれていれば
虫歯予防になる?
“キシリトール入り(配合)”などの表示がされている食品でも、よく見ると「他の糖類」が含まれている商品もあるため注意が必要です。キシリトールは虫歯予防に効果的ですが、他の糖類が酸をつくるのを防止する機能まではないため、例えば甘味成分としてキシリトール98%であったとしても、残り2%に砂糖が使用されている食品であれば虫歯の原因となってしまいます。
また、最近では「糖質ゼロと」や「シュガーレス」などの表記もよく目にしますが、同様にこうした表記だけでは判断はできません。商品の原材料名の項目を見て、甘味料としてキシリトール(またはマルチトールやソルビトールなど虫歯の原因にならない糖アルコール類)以外の成分が使用されていないかどうかを確認することが大切です。
歯科医院で販売している商品は、主に甘味料としてキシリトールのみ使用したものを取り扱っているため、虫歯予防としてお菓子などの食品を選ぶのであれば、市販品よりも歯科医院専売品の方が安心と言えるでしょう。
「市販品」と「歯科医院専売品」のキシリトールの違い
キシリトール配合のガムなどの商品は、スーパーやコンビニなどで購入できる市販品と、歯医者さんで購入できる専売品があります。
これらの最も大きな違いは、キシリトールの含有率(キシリトールがどのくらい配合されているかの割合)です。
キシリトール含有率
・一般的な市販品 30〜70%
・歯科医院専売品 90〜100%
先述の通り、キシリトールの含有率が高いほど虫歯予防の効果も高まります。
また、虫歯予防を目的とする場合、1日5g〜10gのキシリトール摂取が必要とされています。
歯科医院専売品と比べてキシリトール含有率が低い市販品は、その分1日に小まめにたくさんの量を口にすることが推奨されます。
そのほか、歯科医院専売のキシリトールガムには歯の主成分であるリン酸カルシウムが配合されており再石灰化を促進します。歯に付着しにくいガムベースが使用されているので、仮歯や矯正装置、入れ歯を使用されている方も噛みやすくなっています。
キシリトールガムの
効果的な噛み方
虫歯予防に必要な
1日のキシリトール摂取量の目安は5〜10g。
これを1日3〜4回以上に分けて摂取すると効果的です。噛むタイミングとしては、食後や間食後に1回あたり15~20分程度噛むのがおすすめ。口の中に残った汚れを唾液で洗い流し、歯垢も落としやすくしてくれるので歯ブラシ前に噛むのがポイントです。
キシリトールは天然成分のため、継続することで徐々に効果が出てきます。始めてから2週間くらいで口の中の虫歯菌の数が減り始め、
3ヶ月ほど継続することで虫歯リスクの低下が見込めます。
また、赤ちゃんへの虫歯菌の感染予防を目的とする場合には、保護者の方をはじめ、周りの人へのキシリトール使用が推奨されます。妊婦さんにもキシリトールは安全です。
特に産後、乳幼児へのむし歯菌の感染が抑えられると言われているので、妊婦さんにとってはもってこいの予防法と言えるかも知れません。ガムを食べられるようになった子どもからお年寄りまで、ご利用いただけます。
虫歯の原因にならない
オススメのお菓子
虫歯予防を考慮したお菓子を探している方は、『日本トゥースフレンドリー協会認定のお菓子』を選んでみてはいかがでしょうか。例を挙げると「リカルデント(特定保健用食品のガム)」や「シュガーレス ファイン組(砂糖不使用のグミ)」などがあります。
日本トゥースフレンドリー協会では「食べてから30分以内に歯垢のpHが5.7以下にならない」ことを証明し、歯に優しいお菓子に“歯に信頼”マークをつけて認定しているのでお勧めです。
虫歯を予防するために
大切なこと
虫歯や歯周病などのトラブルを未然に防ぎ、お口の中の健康を維持していくには、毎日の適切なセルフケアと正しい食生活を継続し、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切です。
その上で、キシリトールを普段の生活の中に上手に取り入れることで、更なる虫歯予防効果が期待できるでしょう。
千里丘駅徒歩2分の歯医者・あきら歯科では、予防歯科にも力を入れています。
患者様のお口の状態に合わせた正しい歯磨きの仕方や、おすすめのキシリトール製品、虫歯や歯周病予防に効果的なセルフケアグッズのご提案なども可能です。 ご興味のある方は、お気軽にお尋ねください。
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